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古いミシンの革ぬい改造その後 アンティークミシン 

ブラザーの職業ミシン「ヌーベルMD」を革ぬいに使えるようになり、上下共に5番手の糸(ビニモMBT)も使えるようになった。ただ革の固さや厚さにはかなり左右されて、条件が変わる度に糸調子の設定し直しが必要である。密度が大きい革を、針と太い糸がすり抜けるのだから、容易なことではないのは当たり前。

ネットでいろいろ情報を集めてみると、厚物、革ぬいには半回転垂直釜が有利との主張がある。ヌーベルは全回転垂直、その前の家庭用ミシンは全回転水平であった。半回転垂直釜のミシンを使ってみたくてこれもヤフオクで探して2台入手した。昭和のミシン(黒いHA) とその後の時代のJ-A1。価格はこれらも数千円。どちらも動作は保証されていない。黒ミシンは「動きません」との説明つき。簡単な構造なので動かないのは調整が崩れたか、さび付いたぐらいだろうと高をくくって、悪戦苦闘の末、それぞれ柔らかめの革が縫えるまでに仕上げた。

黒いミシン、HA型、アンティークとか昭和ミシン、レトロとか言われて人気があるらしい。その良さを考えてみると・・・以下のような特徴が有る。

1.当時の標準化が行き届いていて、メーカーが違ってもかなりの部品が共通に使える。いまだに新品の部品が入手できる。レストアがきわめて楽に出来る。
2.プーリー(はずみ車)が大きくて重いので、手回しでもはずみ車効果で楽に革を突き刺せる。もう一台の方は黒ミシンより後の時代の物で、プーリーが軽くて小さく、手回しするのに力が要る。電動が前提か。
3.半回転釜は動きはややトリッキーで、構造はシンプルだが調整できない部分もある。良くわからないが、釜の剣先と針の距離をどう調整すれば良いのかわからずじまい。結局針棒側で微調整をした。
4.この時代のミシン電動化は外付けの交流モータを標準化された位置・構造に取り付けることで容易に出来るようになっている。布を縫うにはほとんど問題が無い。一方のミシンにモータを取り付けてみたが、それなりに便利に使える。しかし歩くようにゆっくり縫うというのは無理。

最近の家庭用や職業用ミシンのモーターはほとんどが電子制御でサーボ機能を備えている。ミシン機構の回転を検出して、モーター駆動をコンピュータ制御をしている。モーターそのものも違うようだ。だから一目ぬいを1秒のようなノンビリした制御も安定に容易に出来る。家庭用も職業用ヌーベルもそれが出来る。しかし、厚い固い皮を突き刺すために、十分な駆動トルクを超低速でも発揮させるにはそれなりのお値段のモーターが必要のようで、数万円は覚悟が必要。そのうちステッピングモータでも使ってみようかなぁ・・・

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ミシン用の小型モーターに、モータープーリーを2段にしてトルクアップするキットも販売されているようだ。約1万円。

 もうひとつ古いミシンにある特徴的な機能はストップモーションという機能。プーリーと本体軸の結合を、大きな負荷がかかったときに滑らせて本体や場合によってはモーターを保護する役目を果たす。これは最近の電子ミシンになるまでは装備されていて、共通の構造、寸法になっている。プーリーの真ん中に45Φの金属握りがある。これを緩めることで滑らせることが出来、下糸巻き作業の時などにも便利である。しかし革ぬいには邪魔な機能で、固い革など縫うには滑らなくする必要がある。いろいろなやり方があるようだが、やすり一本で、何とか実現できた。
プーリーの中心の穴にやすりで溝を切って、薄い金属をL型にした物を差し込んで心棒とプーリーを勝手に回転しないようにした。あとは元の部品を納めれば外観も変わらず、元に戻すのも簡単。

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 最近の電子ミシンはマイコン制御によって、クラッチのような構造を制御しているので、この機構は見られない。だから下糸ボビンをセットするとこのクラッチが外れて、下糸巻器だけが動作する。また負荷が大きい時のモーター保護のために、ミシン機構が停止したときの検出も出来るので、モーターにむやみに駆動電力を与え続けることは無い。なおほとんどのミシン用小型モーターには温度ヒューズが内蔵されていて連続高負荷に対処しているようだ。

ミシンで革を縫うのに、ミシンの仕組みの本質的なところを理解する必要があった。ミシンは素晴らしい発明で、本質的な動作は昔から変わっていないように思う。
針の先端に通した糸が革を貫通して下まで入ったときに、釜の剣先で針の先の糸を引っかけて、釜の2重構造によってボビンの下糸巻を一周してくぐらせるようにして、下糸に絡ませる。そのときの糸量は天秤が下がることで供給される。その後、それを針を引き揚げながら、天秤を上げることで糸をめいっぱい引き戻す。この動作の過程で釜を一周する長さの上糸が革の下に引き込まれ、引き戻される。天秤で上げ下げする糸量と、糸とりバネの稼働量で往復する糸の量が決まっている。数ミリ縫う間に数センチの糸が行き来するのだ。布なら摩擦も少なく厚みも大したことは無いが、革や、ゴムなどは厚みも摩擦も半端ではない。その摩擦の中を一目あたり数センチの長い糸が、針が開けた穴を行き来する、だから針の太さや糸調子を合わせる(正しく縫う)のが難しいのだ。

 革を縫う動作で、多くの現象は上糸調子がゆるいように見えることだ。特に厚い皮で、太い糸を使ったときに、この摩擦抵抗が大きくて、下糸を上糸で十分に引き揚げられないわけだ。上調子の調節機構だけでは十分に改善できないケースもある。下糸ボビンケースも糸調子のねじをむやみにゆるくは出来ない。糸取りバネの稼働量と強さで少し調整できる。マジックカケや、プリテンション機構など追加する補助機構によってで上糸のテンションを助けてやることも効果がある。

()の送りが滑ったりして送り量が不十分の時にも糸調子がおかしく見えることがある。押さえの布との摩擦、送り機構の歯の高さ、押さえの圧力が正しく機能しているかどうかも仕上がりの糸の調子・しまりぐあいに現れる。

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その他の革、糸、針の摩擦軽減処置として、糸にシリコンを塗布すると効果がある。下糸を巻くときと実際に縫うときの上糸のルートに、シリコン剤をスポンジにしみこませて、はさんでその中を通すようにすると便利だ。
押さえ金は最低限テフロンにすべき。針や革にも許されるなら、シリコン剤を塗布すると効果的。ローラー押さえや、上送り機構なども有効かも知れぬ。
使用したのはクローバーのソーイング用シリコン剤(35ml)KUREの多用途すべり剤(スプレー)が便利だ。

使用する針の太さと糸の太さは大きな影響が出る。革を縫うなら最低でも革用の針を使うべきで、先端がナイフ状になっているので材料を貫通しやすい。DBxF2(職業用)#19以上は取付部直径が2mm#18以下は1.6mmなので、両方は使えない。なおステッチ方向はストレートだがDBxF22と言う針は#9#23が同じ取付寸法で使える。#18以下はHAx1LL(家庭ミシン革用)直径2mmの切り欠きありが使用できる可能性はある。ステッチ方向はDBxF2LR)とは逆向き(LL)である。HAが使えるかどうかは、針棒の追加工状態次第である。要は針が針穴センターに落ちるかどうかと、釜の剣先との位置関係がどうかで判断すべきである。

半回転垂直釜の古いミシンを革用に改造する手順
清掃、注油の上、注意深く部分的に分解・清掃・注油・組立をして、特に外釜、中釜の糸賀とおる部分のキズを確認して磨き上げる。重要作業。以前の使用者が何度も針を折ったりしていると深い傷を負っていることがある。普通は削る(磨く)だけで何とかなりそうだが、場合によると交換の必要がある。中釜は「ほぼ」互換性があるようだ。ネットで1,3002,000円。全回転垂直釜ユニットも市販品がある!!
針棒、釜の動きなど確認し、針棒の高さ、位置を正常にする。この時点で剣先と針の位置関係を確認しておく。
その他押さえ板の上げ下げ、運針距離、送り金具、テンションバネ、などなどチェック、調整、修正をする。
ここまでの状態がオリジナルであり、ここで普通の布が縫えることを確認しておく。HA針、50番糸。
次に太い針と糸のために改造
針板の針穴の拡大 2.52.7mm程度まで広げて、内部を磨く。ボール盤、ミニルーターが活躍する。
針棒を注意深く外して、針溝の深さを中心部で0.4mmほど深くする。小型のダイヤモンドやすり、ミニルーターが活躍。
ここまでで組立、太めの針が針穴の中心に来ることと、剣先と針のえぐれ部との距離を0.20.4mm程度に詰める。 針の下死点から2mm上昇した時点で最接近とする。
必要に応じて、下糸巻器のゴムを新品に交換する。ネットで「アンティークミシン 下糸 ゴム」が検索ワード。(100600)

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プーリー(はずみ車)を外して、軸の内壁を約5mm幅、深さ0.51mmの溝を作る。これと本体軸の切り込みを合わせてそこに0.5mm厚の金属爪をL型にして挿入しプーリーと軸をロックさせる。元のように組み立てる。

必要ならばプーリを外したときにつまみ(ハンドル)を取り付ける加工をしておく。

上糸なしにして、プーリーをまわして手を離したときに勢いで最低でも1,2回転するくらいの軽い動きになっている必要がある。すぐ停止したり、変なこすれ音がしないように注意深く点検する。

 

以上が古~いミシンを革ぬい用に改造するために学んだことのまとめ。ミシンのイロハのところはかなり省略した。

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